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February 04, 2006

「建築文化論」の第二課題

「建築文化論」(第二課題)の添削結果が返ってきました。
分析が不十分であることで全体的に説得力が無いというコメントを頂きました。肯定する意見だけでなく、否定の意見も出して、それらを積み重ねてほしいとのこと。
A評価まで鼻の差の78点!?もっと精進しろという激励なのかなあ...

と、言うことで反面教師として活用してください。

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『建築文化論』レポート(第2課題)
「アサヒビール大山崎山荘美術館~温もりのある場所」

1.はじめに
 建築物には、住居のような日常生活に直結した空間を提供するだけではなく、日常生活から逸脱する空間を提供するという側面もあろう。この観点で捉えると、美術館は後者ではないだろうか。一般の人々には、まだ美術館は特別な場所であると言えるだろう。
 しかし、美術館は、作品を観るだけの空間という考えで良いのであろうか。それでは、建築物は、作品を雨や風から防ぐだけの存在としかなりえない。著名な建築家を起用し、設計をしてもらう背景には、単に機能面だけでなく、美術館としてのコンセプトが存在し、それを具現化したいという要求があるのではないだろうか。

2.実際に見学して
 寒波が一息ついた冬の日。京都四条烏丸から乗車した阪急電車の車内に差し込んでくる日の光には、少し汗ばむほどの暖かささえ感じたくらいであった。  しかし、大山崎駅からJRの線路を渡り、少し急な坂を上がり、隧道をくぐり抜けた途端、山中であることによる静けさとともに冷気が身体を包み込んだ。既に10時過ぎだというのに、早朝の寒さの記憶を留めるかの如く、池の水には氷の欠片が浮かんでいた。見学した日は日曜日であったが、開館直後であり、しかも観光シーズンも過ぎた年の瀬ということで、訪れている人が少ない状態であったため、静さだけでなく冬の寂しさ、あるいは物哀しさも感じさせた。  正面の門を入ると、今回の目的地であるアサヒビール大山崎山荘美術館の本館が目に飛び込んできた。
 このアサヒビール大山崎山荘美術館は、実業家加賀正太郎氏が大正初期から昭和初期にかけて建造した山荘を修理補修し、美術館として再生させたところである。その再生作業では、同時に本館に併設する形で、建築家安藤忠雄氏の設計による新館が新たに建設されている。つまり、この美術館は、本館と新館という新旧の対からなる空間である。
 また、周辺の自然環境と人工の建造物の対も存在する空間とも言えるであろう。JR京都線という忙しなく電車が行き交う場所からほんの10分程しか離れていないのに、まるで違う世界であるかのような静寂に包まれた空間となっているのである。  本館1階は玄関部分を除いて白を基調としているが、2階は濃い茶色を基調とした周りの木々へ融け込もうかとするように、落ち着いた外観である。屋根に敷き詰められた瓦の色は少し派手なオレンジであるが、紅葉の名残を残す12月では、さほどの違和感は無い。  2階部分の茶系の壁と白の窓とのコントラストも印象的である。
 また、1階は、西側が池に面しており、テラス部分がアーチとなっている。特に凝った装飾が施されているわけで無いが、それが逆に山荘らしさを与えているかのようである。  チューダー様式をもとに設計された本館は、玄関ホールにある暖炉の煙突も人々に対して「暖かさ」を感じさせる。本館の玄関の扉を開いて玄関ホールに入った瞬間に、磨き上げられた木の温もりが、外気で冷えた身体だけでなく、心も温かくしてくれるのである。  本館の室内では、第一展示室の木と石の組み合わせによる装飾が興味深かった。第一展示室は、元々は応接間として使われていたのであろうか。オレンジ色で彩られた窓から差し込む光がやさしい。この辺には、テラスを介して第一展示室への採光への配慮が見られるように思える。開放的なテラスには大きな窓を設けることで、冬の短い日照時間のうちにできる限り日の光を室内に取り込もうとしているかのようである。
 2階ホールにおいては1階テラスの採光とは考え方が違うように思える。2階ホールを取り囲む窓はそれほど大きいものではないため、太陽が窓を通り過ぎるという限られた時間の楽しみなのである。今回の見学では、一日に4回だけ演奏される100年程前のオルゴールの音色とともに、冬の柔らかな太陽の光が差し込んでくるという光景を見ることでき、忘れることができない至福の時間を与えてくれた。
本館から新館へと続く通路では、冬ということもあり、外の冷気を吸い込んだかのような冷たい感触が手に伝わってくる。この冷たさが新館へ向かう緊張感を与えるようにも思える。このときは、この通路に居るのは自分一人だったこともあり、コンクリートに響く靴音と、立ち止まったときに訪れる静寂のギャップが心地よかった。静寂と言っても完全に無音という訳ではなく、壁の向こうにある水路を流れる水の音がかすかに響いてくるのである。このことによって、孤独感のような不安な気持ちを緩和させてくる。
展示室「地中の宝石箱」への扉が開いた瞬間、冷気を打ち消すような空調の効いた空気が身体を包み込むとともに、眼前にモネの「睡蓮」が飛び込んでくる。この瞬間のギャップが衝撃的であった。
 この美術館の外観に対する印象は、本館の「温もり」と新館の「冷たさ」であった。 本館を構成している要素は木材や煉瓦などであるが、新館を構成している要素は無垢のコンクリートとガラスである。しかし、新館に隣接する本館1階の壁が白を基調としているため、思ったほどの違和感は無い。  また、本館を中心に置いた庭園とするならば、コンクリートがむき出しとなっている新館の外観が視界に入ることは唐突な印象があり、かなり異質な存在と言えそうである。しかし、実際には、初めて訪れる人間が、案内板に従って、隋道から美術館へのコースを歩いてくると、本館の存在だけが目に留まり、新館の存在にはほとんど気づかないであろう。新館の大半を地下に埋没させるとともに、通路をガラス貼りとしたことが功を奏しているのかもしれない。

3.本美術館の位置付け
 「いつも頭にあったのは、人間とアートがぶつかり合い、対話する<場>をいかにして生み出すかということである。それは芸術作品と建設、そして観衆との間にどのような関係性を設定するかということにほかならない。」(1)
これは、新館を設計した安藤忠雄氏の述べた言葉である。
この「人と美術、自然、そして建築のぶつかり合い」という構想を一番近い形で実現したのが、直島コンテンポラリーアートミュージアムと言われる。
 では、アサヒビール大山崎山荘美術館はどうであろうか。
安藤氏の思い描いていた「美術」とは現代美術であり、「地中の宝石箱」で展示されている印象派の作品ではない。しかし、作者が絵に込めた思いや感情を発露するという点では、現代美術も印象派の絵画も同じであろう。
そして、無垢のコンクリートで覆われた円形の展示室は、それらの思いや感情を単に受け止めるだけでなく、素材の持つ個性によって戦いを挑んでいるかのようである。従って、作品にそれなりの力が無いと、展示室の力に負けてしまいそうである。
それは、「ホワイトキューブ」と言われる従来の美術館ではありえない状況である。作品と建築のせめぎ合いに、鑑賞者自身も加わらなければならないのである。しかし、この状況では、なにか展示する作品が限定されてしまうという危惧もあるのではないだろうか。

 この美術館の持つもう一つの側面は、歴史的建築物への対応という点であろう。
個人が所有していた建築物の荒廃に対して。その周辺住民である大山崎町住民からの保存の要望に応じる形で修復・整備が進められたという。
 日本の建築物においては神社・仏閣以外、特に近代建築、いわゆるモダニズム建築に対する保存の姿勢が低かったと言われている。この美術館はモダニズム建築とは異なるものであるが、大正・昭和に建設された建築物に対して、文化的価値を見出し、保存していくという行為の具体的事例の一つと言えるのではないだろうか。

4.おわりに
 本館は、日本人が思い浮かべる「洋館」のイメージを具現化しているのではないだろうか。だから、初めて訪れたにも関わらず、「温もり」を感じてしまうのかもしれない。
本館の持つ印象があるからこそ、新館という存在が際立ってくるのではないだろうか。

■ 註
(1) 美術出版社編『安藤忠雄の美術館・博物館』美術出版社、2001年、92ページより引用

■ 参考文献
・ 美術出版社編『安藤忠雄の美術館・博物館』美術出版社、2001年
・ 松隈洋著『建築ライブラリー16 近代建築を記憶する』建築資料研究所、2005年
・ アサヒビール大山崎山荘美術館 受付配付パンフレット
 

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