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November 04, 2009

「写真概論」(第二課題)の内容

写真概論 レポート(第2課題)の添削結果も戻ってきたので、レポート本文を掲載します。
自分としては消化不良の部分があるけど、結果オーライですかね!?
写真のデジタル化の観点を論じるなかで、メディア論のレポートで整理しようとした部分(ベンヤミンのところなど)があったんで、それを絡めたのが功を奏したのかなあ...

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「現代における写真との係わり」

1.はじめに
 写真が身近なものとなった要因として、自ら写真を撮影するようになったことが考えられる。現代では写真に対する専門的な知識が無くても、ある程度のレベルの写真が撮れるようになった。勿論、専門教育を受けた者との間で格差は存在するが、その格差をカメラが埋めているのである。テクノロジの進化によって、写真を扱う人々の裾野を広げることになったと言えよう。
カメラ自体が小型化し持ち運びしやすくなったこと、撮像素材も銀塩フィルムとなって取り扱いが簡単となったこと、現像しやすく加えて劣化が少なく長期保存が可能となったこと、焼き増しによって複製が作れることから、記録媒体としても一般社会に広く普及するようになった。加えて、低価格でも簡単に写真が撮れるコンパクトカメラの出現や、撮り終えたフィルムの現像をカメラ店以外の商店が取り扱うようになったことで、一般の人々が日常の生活の中での記録のためにカメラを使用する機会が増えたと言える。
自分にとっては、小学生時代に使っていたトイカメラ(SAKURA PAK100)から、中学になって一眼レフカメラ(OM-2)へ切り替えたときに、レンズやシャッタースピードによる表現の違いを大きく感じたが、それよりも、身体の小さい自分とOM-2のカメラサイズとが合致したことでカメラを使うという行為が苦にならなかったことが印象深い想い出となっている。

2.写真のデジタル化
 写真が身近なものとなった他の要因として、雑誌や新聞等のマスメディアを介して目に入る機会が多くなったことも挙げられる。また、個人を特定・証明するために、免許や履歴書に証明写真を貼り付けるという行為も日常的に行われている。
 現在では、デジタル化によってフィルムを現像するという行為が不要となり電子機器の進歩による高機能化の促進とネットワークの拡張により、高解像度の映像(動画)であってもストレスなく、ネットワークで配信でき、そのデータを大容量の記憶媒体に収めて持ち運びできるようになった。更には、カメラ付き携帯電話が実現したことにより、携帯電話を持つ人=カメラを持っている人と言っても過言ではないだろう。

 写真家はカメラを携えてさまざまな場所に赴き、独自の視点から
 一瞬のスナップショットで動きを捉えることができるようになった。(1)

 カメラが身近になることで、写真そのものも身近な存在となっていったが、このようなデジタル化の進んだ現代では、写真の価値を何処に見出せば良いのであろうか。

3.デジタル化の問題点
 デジタル化の進んだ現代における写真の問題点の一つは、オリジナルの価値をどう捉えるかであろう。銀塩フィルムを扱っている場合ではフィルムから印画紙へとプリントしたタイミングでオリジナルプリントという価値を生み出していたが、媒体を置き替えても内容が変化しないデジタルデータの場合には、何を持ってオリジナルの写真であると捉えれば良いのであろうか。
 別の問題点として写真を公開する場所に対する事項がある。現在のように、誰でもネットワーク上に公開できる環境では、何が良い写真で、何が悪い写真なのかという曖昧さが生じてくるのではないだろうか。
かつて、写真が編集によって異なった意味を持ってしまう、あるいは大きく歪曲されてしまうことを回避するためにマグナムという写真家集団が生まれた。しかし、写真家が一方的に写真を世に送り出しているのでは無く、写真家と新聞・雑誌というマスメディアとの間には適度な緊張感があったにも係わらず、ネットワークに直接自分の写真を提示できる現代では、お互いをチェックする機能が欠如している。また、写真展を経て、写真集という形へと結実させようとしていた過程よりも、ネットワーク上での提示で終わってしまう可能性が高くなり、保存・保管という点での写真の優位性が薄れてしまうのではないだろうか。
 また、カメラの高性能化によって、例えば、フィルムの特性などを知らなくても誰でも簡単に撮れてしまう状況では技術面での平均化、表現の画一化の恐れがある。

4.写真と社会とのかかわり
 マスメディアを介して社会に提供する写真として、報道写真と広告写真という二つの側面があるが、リアリティとファンタジーという両極端のスタンスを持ちながら、いずれも写真を使うことで説得力を持たせようとしている。
先に挙げたように、報道写真は、マスメディアによって社会の揺れ動く姿をそのまま世界へ見せつけるかのような使われ方をしていた。広告写真も消費社会において、常に時代を先取りしながら歩んで来たと言える。
笠原美智子は、著書「写真、時代に抗するもの」の冒頭で、湾岸戦争、あるいは9.11同時多発テロ以降にフォトジャーナリズムやドキュメンタリー写真の意味や役割が変わってきたことを述べる。湾岸戦争においては、「高度に情報操作され、ハイテク技術を駆使した結果、テレビをとおして私たちに供給されたイメージは、みごとにバーチャル化した戦争の映像であった」(2)と挙げるように、攻撃によって人の命が奪われているにも関わらず、その光景が隠蔽された映像は、ベトナム戦争などで写真家たちが伝えようとした「リアルな戦場」とは全く違ったものとなっていた。
 また、「浴びせられるほどに大量に供せられるイメージとまったく伝えられない映像、こうした視線の非対称性があからさまなかたちで進行しているのが現在、9.11同時多発テロ以降である」(3)と述べるように、巨大なメディアや国家のような強大な権力によって情報が選別される状況では、写真自体はリアルな現実を捉えていたとしても、偏った判断しかできないであろう。
 笠原はこのような言葉で疑問を投げかける。

 けれども、さまざまな意見や立場や記憶を封殺し、もしくは視線の
 非対称によって他者への想像力を失ったとき、過去、私たちの歴史に
 なにが起こっただろう。
 写真はいま、どのような表現をしたらいいのだろう。この視線の非対称が
 顕著ないま、巨大な力に組せずに、単純化されたわかりやすさに疑問を
 抱かざるえない表現者たる写真家は、誰に向かってどのような立場をとって、
 どのような表現をするのか。(4)

5.社会へ発信する写真
 この論説は、現代社会によって写真の在り方が変わっているという考えに基づくものであるが、逆に写真が社会に対して影響を与えてきたということも事実である。
 例えば、先に挙げたベトナム戦争では、アメリカ側、あるいはベトナム側というどちらか一方のスタンスで戦争を捉えるのではなく、中立のスタンスで戦場を俯瞰した写真家やジャーナリストが多数存在した。彼らが写真を介して捉えた戦場の姿は、その後の社会運動へ影響を与えた。
 
 人間世界のありようが、生存環境ごと危機的状態になりつつある中で、
 写真の、とくにメディア写真のありようも、大きく変わろうとしている。
 さすがの大魔法使いもその恐るべき力を失いはじめている。(5)

 マスメディアが発する言葉とともに写真を見せるだけではなく、写真そのものから伝わっていく力強さが要求されるのである。

5.おわりに
 現代アートの出現以降、写真がアートの表現の一つとして認知されてきたことも、写真の変化の現れと言えるだろう。
 日本の写真の変遷を辿ってみると、例えば、木村伊兵衛には「スナップショット」、土門拳には「リアリズム」、森山大道には「アレ・ブレ」、荒木経維には「私写真」というように、写真家と深く結びついている表現方法やテーマがあった。
 また、写真家ではないが、森村泰昌や、やなぎみわのような美術家は、写真の持つ特性を生かした作品を作り出した。

 これまでにあげた作品例からも明らかなように、1950年代から
 70年代初頭にかけて現代美術に取り組む芸術家たちは、写真や
 複製技術(ポップアート)、表現行為それ自体を問い質す手段
 (コンセプチュアルアート)、記録手段(ランドアート)と
 して作品に取り入れることによって、従来の芸術作品のあり方に
 対して問いを投げかけたり挑戦することを試みていたと言える。(6)

 ベンヤミンは、複製技術によるアウラの喪失や、脱アウラ化した写真による歴史的転換点の発生を様々な著書で述べたが、21世紀は写真がフィルムからデジタルへと転換するなかで、記録として写真を撮るフォトグラファーの側面と、作品として想いを伝えるフォトアーティストの側面とのバランスを取って行く必要があるだろう。
(3428字)

■ 註
(1)「写真を<読む>視点」小林美香著、青弓社、2005年、48ページ
(2)「写真、時代に抗するもの」笠原美智子著、青弓社、2002年、8ページ
(3) 同書、9ページ
(4) 同書、11ページ
(5)「メディア写真論」佐野寛著、パロル舎、2005年、13ページ
(6) 前出「写真を<読む>視点」、202ページ

■ 参考文献
・「写真を<読む>視点」小林美香著、青弓社、2005年
・「写真、時代に抗するもの」笠原美智子著、青弓社、2002年
・「メディア写真論」佐野寛著、パロル舎、2005年、13ページ
・「ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読」多木浩二著、岩波書店、2000年

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