« クリスマス会 | Main | 年初から始まる展覧会 »

December 27, 2010

「建築計画論1」(第一課題)添削結果

12月10日提出分のレポート課題「建築計画論1」(第一課題)の添削結果が戻ってきました。
この課題では、「課題の内容が理解できているか」、「事例が的確で問題意識を持って観察しているか」、「情報や法律などを読み取る力があるか」、「自分なりの考えが述べられているか」と言う観点での達成度を踏まえた上での総合評価をしているとのことで、私の場合は、最後の「自分の考え」については好評価でしたが、それ以外は普通という評価でした。
また、引用文の使い方や、「おわりに」に持ってきた内容が他の内容と関連性が弱いなどの文章構成については今ひとつ工夫が必要とのこと。まだまだですねえ...
以下がそのレポートとなります。

---
■ 建築計画論1(第一課題)「横浜石川町の民家再生ギャラリー・カフェ」

1.はじめに
 「横浜トリエンナーレ2005」、および「横浜トリエンナーレ2008」において、市民サポーターやアートNPOの活動をさらに盛り上げ、ネットワークを広げるための拠点施設として使用された横浜市中区日本大通りに面する「旧関東財務局」と「旧労働基準局」は、「横浜トリエンナーレ2008」以後もZAIMというアート施設として期間限定で使用された。
 ZAIMには、ZA=「座」=人々が集い、交流する場と、IM= intermediary =「中間支援」機能と言う「場」と「機能」の相乗効果という意味を込められているとのことである。
 今回調査に出かけたZAIM CAFE ANNEX は、ZAIMの2 号店として同じ中区石川町に造られた。ZAIMは1928年に建造された歴史的建造物であるが、このZAIM CAFE ANNEX は1924年築の民家を改修したもので、当初はギャラリーのみの営業であったが、カフェとしても営業することになったとのことである。

2.現在の施設状況
 JR根岸線石川町駅の南口改札を出て、左側に少し歩き郵便局のある十字路を右に曲がり大谷丸坂を登って行く。その坂を道なりに右に進むと山手イタリア山庭園があるため、横浜山手を散策する観光客がこの坂を利用することもあるが、同じ横浜山手に繋がる坂であっても港の見える丘公園へと繋がる谷戸坂ほどの賑わいはない。
 この大谷丸坂の途中にフェリス女学院への抜け道となる分岐点がある。この分岐点を左に曲がり、そのまま直進して行き止まりを右に曲がるとフェリス女学院への抜け道(近道)になるが、その抜け道の手前のT 字路を右に曲がり、細い坂へと登って行くと、途中にその店がある。周囲は、アパートも見受けられるが、どちらかというと一軒家が多い住宅地である。ちなみに、坂の上は一般の邸宅となっており行き止まりとなっていた。
 その店は赤い屋根に薄い黄色の壁という外見となっており、手前の木造のアパートなどの周囲の環境とは異質な空気を醸し出していた。また、坂の途中に建っているため、坂の下からみると二階建ての建家であるが、アルファベットのL を逆さまにしたような造りとなっている。入り口のあるフロアが一階で、地下室があるというのが正解らしい。坂を上がって行くと横長の窓から窓際の装飾品の向こうに階段があるのが見えた。店の前には小さな看板があるだけで、一見するとここが何の建物であるか判らない。ここに到達するまでに案内板も見当たらなかったが、店内への入り口となる青いドアには、カフェが土曜日、そして日曜日のみの開店であることが記載された手書きのメモが貼られているので、この日も開店しているように見えるが、一般の店舗に見られる「開店中」あるいは「営業中」の表示は無かった。つまり、この店は、その存在を予め知っていて、かつ、経路も把握している必要がある。一見さんが通りすがりで店を見つけて、興味を引かれてふらっと入るということは、まず無いだろう。
 そのような雰囲気だったので、ドアを開けて店内に入るのは正直ちょっと戸惑いがあったが、ドアが完全に閉まっておらず、何かしら入店を歓迎しているような感じだった。
 入り口の正面にラウンジ、左右に一つずつゲストルームと呼ばれる個室があるが、ゲストルームにはドアはなく、開放的な雰囲気であった。店内には「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」と女性店員が声をかけてきた。何となくアットホームな感じである。
 二つのゲストルームにそれぞれお客が居たので、ラウンジの二つのテーブルのうちの一方を選んで、とのことなので、二人席のテーブルを選択する。一人用の黒のソファに身体を沈めると、目の前の木製テーブルがユニークな形状であるのに気が付く。天板が平らでなく、でこぼこなので、水を飲んだ後にコップを何処に置こうかと一瞬迷ってしまう。
 このテーブルの横にある窓は壁の下半分に取り付けられているため、背の低いソファとの組み合わせが丁度良い感じだ。見渡すと、テーブルとソファは同じ組み合わせではなく、個々のテーブルによって変えているようだ。天井を抜いているため、屋根裏と梁が見える。下がっている照明器具も場所によって異なっている。
 メニューは珈琲や紅茶の種類に拘る訳では無く、食材に拘った料理がある訳でも無く、ごく普通のカフェメニューである。今回オーダーしたのはホットの珈琲であるが、プレーンな白のカップとソーサーという潔さが妙にこの空間に合っている。流れている音楽は1980年代のAOR 。薄いピンクのカーペットがちょっとチープに思えたが、柔らかすぎないソファで日暮れまでの時間の流れを感じているのは悪くない。
 カウンタの柱が以前の建物のものかを女性店員に訪ねてみると、マスターもう少しで戻ってくるので話が聞いてみたらどうかという答え。マスターが戻ってきたあと、少し話を伺う、そして、マスターは薪ストーブの火起こし作業に。時間がゆっくり過ぎているように思えても、やはり冬の夕刻では、つるべ落としのようにあっと言う間に日が暮れて行き、薪ストーブの温もりが心地よい。
 1 時間程の滞在のあと、会計をしようとすると、機械式のキャッシャーが動作する音が一瞬店内に響き渡った。

3.将来の姿
 店舗を調査で伺った際に、このカフェのマスターであり、空間デザイナーの植竹悦夫氏にリノベーション中の写真と図面の一部を見せて頂いたが、最初は「ZAIM庵」と名付けていたようである。学生や若手アーティストにも積極的に場所を提供するということを目的としたギャラリースペースと言うことで、費用負担がし易い一日のみのレンタルも可能となっている。
 さて、リフォームが初期状態に戻すことであり、リノベーションが付加価値を高めるものだとすれば、この店の付加価値とは何であろうか。
 本来の民家は人が住まうところであり、そこに住む家族と外界とを隔てる入れ物であった。しかし、リノベーションによって、他者への開放を行うだけでなく、他者(訪問者)がくつろげる空間、所有者が構築した「くつろぎの仕掛け」を共有できる空間へと変化させたのである。しかし、この店に在店中にガイドブックを見て訪れたのか、席に着いた途端、記念写真を撮り続けるカップルも居たが、もしかしたら、そのような横浜山手や元町を訪れる観光客がこの店に足を伸ばすのは、オーナーやマスターの本意ではないかもしれない。
 そのように感じてしまったのは、太い梁や黒く磨かれた柱を持つ日本家屋をベースに、デザイン性の高い家具やアールデコの照明器具が混在するという空間は、ともすれば雑然とした印象を感じてしまうという危うさがある。しかし、編集者・高木伸哉はこのように述べている。
 
 リノベーションにはその建物が過してきた時間という価値を手に入れられる面もあります。(中略)家具調達のルートをもっているオーナーは、いろんなスタイルの家具を集めてくるのですが、バランスを崩さないでいられるのはすべてを許容する年季の入った空間があればこそかもしれません。(1)

 モノを受け入れる空間と、その空間を共感・共有して受け入れてくれるヒトという三つの要素の関係が継続しなければ、リノベーションの意義が果たせないということであろうか。だが、現在置かれている状況は「知る人ぞ知る」あるいは「この空間を共有できる者が集まっている」という状況にも見て取れるため、今度その部分を保ち続けるのか、緩和して行くのかが問題点になるであろう。 
 緩和する方向に進むのであれば、法然院梶田住職の述べた以下の一文がヒントになりそうである。
 
 一番大事なことは、日常的な時間感覚はからちょっと離れることだと思います。アートでも仏様でも一緒かもしれませんが、仏様と出会ったり、アートと出会ったりするときに、現代日本のなかで生きている時間間隔と同じ感覚で向き合っても、ほとんど出会えないと思うんです。(2)

 住宅地の中にひっそりと建っている民家をリノベーションした空間が、法然院と同様の「場所性」を持つのであれば、法然院が果たしているコミュニケーション・ハブ的に更に開放的に市民と接していくのも一つの手段かもしれない。
 また、本来ここはギャラリーとしての運営を目的としているのであれば、その危ういバランスで保っている室内空間と上手く釣り合う作品を選択する必要が生じるのではないだろうか。
 この空間は、休日になると満員で落ち着かない山手のカフェのような観光化/画一化された場所と一線を画すという信念は感じるが、やはりギャラリーであるからにはスペースを貸し出していない期間でも作品展示があって良いだろう。

 いわゆる貸し画廊と違って、こうしたギャラリーにおいてギャラリストはキュレーターであり、どのような展示を行うかについてはっきりしたビジョンを持っている。彼らがギャラリーにおいて気にかけるのが、まずは壁であり、ついで床である。(3)

4.おわりに
 ZAIMが「ZAIM PROJECT 」という名称で掲げた目標が幾つかあり、その中ではアーティスト同士の出会いやコラボレーションからの企画発信も提示しているが、一番の柱は、市民がアート作品に気軽にふれあい、クリエイティブな活動に関心を持つということではないだろうか。
 来年開催予定の横浜ビエンナーレに際して、このZAIM CAFE ANNEX においてもZAIMで提唱したビジョンとの整合性の実現だけでなく、異なった方向へと発展して行くかもしれないが、アートの発信地という当初の役割を果たす空間で有り続けて欲しいものである。(3896文字)

■ 註
(1) 五十嵐太郎編『リノベーションの現場 協働で広げるアイデアとプロジェクト戦略』彰国社、2005年、32ページ
(2) 大野木啓人編『空間プロデュースの視点』京都造形芸術大学、2004年、134ページ
(3) 五十嵐 前掲書、284ページ
■ 参考文献
・ 大野木啓人編『空間プロデュースの視点』京都造形芸術大学、2004年
・ 五十嵐太郎編『リノベーションの現場 協働で広げるアイデアとプロジェクト戦略』彰国社、2005年
■ 参考サイト
・http://www.yaf.or.jp/zaim/php/
・http://zaimcafe.com/annex/

« クリスマス会 | Main | 年初から始まる展覧会 »